脳科学とロボット工学が爆発的な進歩を遂げた、少し先の未来。

その恩恵を受ける人々は、とある"保険"を考案する。
生きている人間そっくりのアンドロイドの開発、全脳スキャンによる記憶のデータ化、人工知能による思考の再現。

これらの技術に支えられ「未成年者及びその遺族に対する喪失感慰撫のための保険」
―通称「リバイバル保険」はついに実装される。

この保険に加入した者は、毎月一回の全脳スキャンを受けることで、
未成年者、もしくはその保護者が死亡した場合、生前の記憶と人格、姿を再現した死亡者のアンドロイドとともに、
悲しみを癒すために特定の地域で一定期間過ごすことができる。

科学の力によって死からよみがえった彼らは、「ヒトガタ」と呼ばれた。

「ヒトガタ」として目覚めた主人公・春山 行人(ハル)は、
山奥の小さな村で家族との再会を果たす。

死の悲しみを癒すために与えられた、わずかな時間。
生前と同じく、軽い障がいを負ったままの左脚。

「ヒト」と「ヒトガタ」とが交じり合うその村で、ハルは様々な出会いを経験していく。
そして、一つの疑問が浮かび上がる。

「ぼくは何者なのか？」

素朴な疑問は、次第に周囲へと広がり、

それぞれの過去をも揺るがしていく。

ぼくの身体は。
あなたの記憶は。
わたしの感情は。

悩み、迷うハルたち。
そして彼らに最期の時間が近づいていく……。

いま、記憶とアイをめぐる夏が始まる。
―その脚を引きずりながら。